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「あゝ、えらかつたなあ」
川では鮎漁がはじまつていた。
河原の端にある高い築堤の上で、白い割烹着かつぽうぎを着た女が、口に手をあてて何か叫んでいた。
「いやあ、もう沢山ですなあ。さつきはどうも照れ臭くつて弱つたぢやありませんか。何と云つたつて、皆に顔を見られるんだから、たまつたもんぢやない。あんなに弱つたことは生れてからはじめてですよ」
「よし、それでは預つとかう」
と、房一は練吉の顔を見て思ひ出したらしく、
「やあ。――こちらへ」
男はじろじろと房一を見ていた。
「今、あんたの便をしらべてみたがね」
「どうも、済んまへんでした」
そこで自分がどんな取扱ひをうけるか、あたり前の医者としてか、それとも単に「芋の子」に過ぎなかつた高間道平の憎まれ息子としてか、房一は少からず興味を持つた。が、大体予測がつかないではなかつた。きつと、医者として認めたがらない気持がそのまゝ現れるだらう、と。
「ふん」
その時、突然練吉は、房一がさう云ひかけたまゝ当惑した表情になつたのを見た。